Japan Anatidae Site Network
EAAFPガンカモ類作業部会
国内科学技術委員会
Anatidae Working Group Japanese Science and Technology Committee
ガンカモ類の発展的研究と保全に向けて、「ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会」が、2020年10月10日付で発足しました。
【設立経緯】
ガンカモ類の研究者による協力関係については、これまで、東アジア・オーストラリア地域フライウエィパートナーシップ(以下、EAAFP)の元に「ガンカモ類作業部会」があり、その下にガンカモ類国内生息地ネットワークが設置されていました。同ネットワークでは、ガンカモ類の個体数調査や普及啓発、保全活動が推進されており、JOGA (東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ)が支援する形になっていました。
一方で、ガンカモ類の発展的研究に必要な、捕獲・標識に関しては近年、実施は限定的で、これらに関する技術を有する人材も少なくなってきています。リーズナブルな発信器が使えるようになってきたにも関わらず、日本での発信器を用いた研究はロシアや中国などに比べ、非常に限定的です。今後、日本のガンカモ類の研究をさらに発展させるためには、日本国内でのガンカモ類の持続的な捕獲・標識調査の基盤を整えることが重要です。また、国内だけでなく周辺国とも連携を取りながら取り組みを進めていくことも、より必要となってきています。
【目的】
上記の課題の解決に向け
① ガンカモ類の捕獲・標識の長期的な体制を構築する
② EAAFPガンカモ類作業部会の決定事項などを日本国内での活動に落とし込む中間組織的な支援を実施する
という2つの目的を掲げ、「ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会」を発足することとなりました。
【位置づけ】
当委員会の位置づけは、図1の通りです。既存の組織がカバーしきれていなかった、長期的なガンカモ類の標識調査体制の構築を軸として、国内外のガンカモ類調査研究の発展を支援します。
図1.ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会および既存組織の位置づけと役割
【当面の目標】
① 日本に生息するガン類の捕獲技術の確立
マガン、カリガネ、ハクガン、シジュウカラガン、ヒシクイ、コクガンなど、日本に飛来するガン類の捕獲調査を通して、技術の確立を目指します。
② ガン類の捕獲に関する人材の育成
ガン類の主要渡来地において、地元の調査者が核となり捕獲を行える体制を作るため、ガン類捕獲に関する実地研修などを通して人材を育成します。
③ ガンカモ類の捕獲に関わる手続き面のガイドライン作成
特にガン類は、天然記念物や希少種などに指定されている種も多いため、捕獲に関わる手続きについてのガイドラインを作成します。
④ ガンカモ類捕獲に関する技術的な資料集の作成
各種ガンカモ類の捕獲方法に関する技術面を集めた資料集を作成します。なお、本資料については、内容によっては関係者限の公開とすることがあります。
⑤ 標識記録の管理
標識した個体の標識情報の公開と観察記録の蓄積を行います。各種ごとに管理担当者をたて、記録の管理、分析等を推進します。
⑥ 市民科学推進に向けた普及啓発活動
標識個体の観察記録は、観察者からの情報提供が非常に重要となってきます。ガンカモ類の調査研究に関する市民科学の推進に向け、普及啓発活動を実施します。
【文書類】
ガンカモ類作業部会国内科学技術委員会規約(2021 年 9 月 1 日改正)
ガンカモ類捕獲ガイドライン(第1版)(2023年3月公開)
【助成等】
本委員会の活動は、2020年度経団連自然保護基金の助成を受けて行われています。
ガンカモ類の標識調査のための寄付も募っています!
【メンバー】
呉地正行 日本雁を保護する会
澤祐介 山階鳥類研究所
嶋田哲郎 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
池内俊雄 雁の里親友の会
牛山克巳 宮島沼水鳥・湿地センター
森口紗千子 日本獣医生命科学大学
神山和夫 NPO法人バードリサーチ
2021 年 9 月 1 日改正
委員会立ち上げにあたっての思い…
ガンカモ類などの大型鳥類の捕獲、標識は、どうしても大がかりになってしまい、人出もお金も必要になってきます。今まで、日本でのガン類への標識は、「予算が付いたプロジェクトがあるとき」に主に実施されてきました。しかしこれだと、予算がなくなったら終わりで、その後のフォローも尻つぼみになってしまいます。
標識調査は、細く長く、長期間続けることによってその真価を発揮します。3年間で20羽捕まえることと、1、2羽を20年捕まえ続けることでは、わかってくることがまた異なります。
特に、近年は温暖化や中国などの越冬地の環境変化などにより、ガン類の分布や渡りルートが変わってきているのではないか?と思われる事例も見受けられます。そのようなことを明らかにできるのも標識調査なのです。
この強力な標識調査というツールを、日本の主要渡来地で、細く長く標識をすることができれば、モニタリングの意味合いだけでなくそこから派生する研究などが生まれ、ガンカモ類の調査研究の発展に大きく貢献すると考えています。そのような体制がこのプロジェクトで作ることができれば。そんな思いで実施していますので、我こそはと思う方々はぜひ、ご参加下さい。
委員会を代表して
澤 祐介