Identification of Lesser White-fronted Goose

カリガネ識別資料

3.カリガネの渡り

 東側主要個体群については,2018年からロシア北極圏のチャウン湾において,カリガネに発信器が装着され,渡り経路が調べられている(Ao et al. in press).秋の渡りでは,9月下旬から10月上旬にかけてチャウン湾を出発したあと,コリマ川下流,アムール川河口,中国北東部を経由し,11月上旬に越冬地である長江流域の氾濫原(洞庭湖,ポーヤン湖,升金湖(Shengjin Lake))に到着する.渡りに要する期間は,平均で36.3日であった.秋の渡りでは一部,北海道北部を通過し,再び大陸に渡っている.北海道北部のサロベツでは,秋の渡りで飛来するカリガネが増加傾向にあり(Ikawa and Ikawa 2009),宮城県での越冬数の増加と関連も考えられる.

 

 春の渡りでは,3月下旬に始まり,5月下旬から6月に繁殖地に到着する.渡りに要する期間は平均で65.9日であり,秋の渡りよりも長い.春の渡りでは,できるだけ早く繁殖地にたどり着きたいが,雪解けの状況により北上が制限されるため,秋の渡りよりも長くなると考えられる.また,春の渡りでは,オホーツク海北岸のマガダンの西,カムチャツカ半島付け根のペンジナ湾を経由しているものもあり,これまでのロシアの研究者の目視による観察情報とも一致する.

(Ao et al. の論文が公開後、図を追加します。)

 一方,日本に飛来するカリガネの繁殖地は依然として不明である.ロシアの東部におけるカリガネの分布域は,東側に広がっており新たな繁殖地がアナディル湾で発見されている.こうした繁殖地におけるカリガネの動きや中国における越冬個体数の減少が,日本の個体数の増加傾向と関連があるのかも含め,日本に飛来する個体群の渡り経路や遺伝子解析を進めていくことが求められる.